島根の刑務所で行われているTCの取り組みについてのドキュメンタリー映画をみた。
TC(Therapeutic Community=回復共同体)。
アメリカの刑務所ではすでに効果を認められて取り入れられている。
日本の受刑者は4万人ほどいるが、そのうちTCをうけられているのは40名程度。
TCプログラムを受けた場合、再犯率は通常の受刑者と比べて半分以下だという。
日本の受刑者は刑務所のなかでは番号でしか呼ばれないが、TCプログラムの最中は実名で呼ばれる。このように徹底して個人を個人として扱い、集団で円になり話し合う手法をつかって受刑者が自分を再建することを促していく。
楽に死にたいと思っている自分と、自分は罪人なのだからそんなことは許されないと思っている自分を一人二役で対話させたり。
罪の意識がないんだという受刑者には、同じTCプログラムに参加している他の受刑者から、仕事道具を盗まれた被害者はそのせいで働くことが出来なくなり薬物に手を出して人生全体がめちゃくちゃになってしまったんだという話を聞かされて、そこで初めて自分がしたことの結果を実感したり。
受刑者はただただ話すのではなくこういった丁寧な導きを受けながら、自分自身で気づいていく。
島根では若い受刑者の人たちが多く参加していた。
彼らの多くは幼少期に家族からの暴力や虐待、貧困にさらされていて、犯罪とその人が置かれた環境は密接に絡みついていた。だからこそその連鎖を解せるのも人同士の繋がり、支援なのだとすごく感じた。
受刑者の一人が「小さい頃、ただ抱きしめてほしかった。抱きしめられた記憶がない。」
といっていた言葉を聞き、みんな誰しも抱く子供の頃の気持ちを感じ胸が痛くなった。
そして、TCプログラムを終えて刑務所を出た後にもちゃんと受け皿になるコミュニティが民間に委託されて用意されている。ここがすごい重要。
同じようにTCプログラムを受けた先輩たちからアドバイスを受けたり対話することが、再犯を踏みとどまる力になる。コミュニティの力だ。
現状、出所後に身元引き受け人がないひとを反社会組織が取り込むような流れもあるそうで、仕事を紹介してもらえるはずが行ってみたら話が違って結局また無職になり、盗みを働いてしまったと話す元受刑者もいた。
盗んでしまったことをあけすけに話せるぐらい、コミュニティ内で信頼関係を築いていることがすごいと思った。
その話を聞いてしっかりと受け止めてくれる仲間の言葉に、嬉しそうにしていた姿が印象的だった。
また同じ状態にならないように支えるのは人同士の繋がりなんだと改めて感じた。
「暴力をなくしたい全ての人へ」
映画の最後にでた言葉なんですが、すごく印象的でした。是非オススメしたい映画です。